1、条文

  物権ハ本法其他ノ法律ニ定ムルモノノ外之ヲ創設スルコトヲ得ス

2、解説

 (1)、意義

  ・物権は財産権の基礎とも言うべきものであって、その制度が良いと大いに国富が増進する助けとなり、その制度が良くないと往々にして取引の安全を害し、国家の経済に重大な影響を及ぼす。よって、文明国の法律においては、厳しく物権の種類を限定し、各人が勝手に異様な物権を設定することができなくするのが常である。

 (2)、内容

  ①、物権の種類を限定する

   ・欧州では前世紀に至るまで、物権の制度は非常に乱れ、完全な不動産の所有権は稀な状態であったので、取引が不安全となり、経済上の不利が起こった。よって、今世紀の立法においては、たいていみな厳しく物権の種類を制限するようになった。

  ②、限定した物権は法律で規定する

   ・法文で物権の種類を明らかにしないと、往々にして疑義を生じ、物権の制度が不確実となってしまう危険性がある。よって、民法において物権の種類を掲げたものの他は、特に法律に定められたものを除いて、各人が勝手にこれを創設することができないものとした。

 (3)、法定された物権

  ①、民法で定められた物権

   ・占有権

   ・所有権

   ・地上権

   ・永小作権

   ・地役権

   ・留置権

   ・先取特権

   ・質権

   ・抵当権

  ②、その他法律によって定められた物権

   ・鉱業条例

   ・砂鉱採取法


史料)『民法要義巻之二』(梅謙次郎、明法堂、1896)